2008/3/29

日教組vsプリンスホテル

Filed under: (1)コンプライアンスとは — 家坂圭一 @ 0:30

■ホテル側主張の問題点

ホテル側の主張をプレスリリースや報道記事を参考にまとめてみると、様々な問題点を含んでいるように思います。
まずは主張を表にまとめた上で、それぞれの主張の問題点を挙げていきます。
※以下の記述は著者(家坂)の私見であり、いつもの記事と違って、何らかの公的見解を整理したものではありません。

(1)予約を受けた理由 日教組の説明が、「前回の開催時は、街宣車は来たが警察の警備によって問題なく実施している」と実態と大きく異なるものだった。

正しい説明を受けていれば予約を受けることはなかった。
(2)契約解除の理由 大規模な抗議行動による多大な騒音
警察当局による道路封鎖や通行規制

周辺の住宅、学校、病院等の迷惑
周辺の学校での入学試験に迷惑
婚礼、宴会、レストラン、宿泊のお客さまに迷惑

企業理念である「お客さまの安全・安心」が維持できない。
(3)解除による損害 契約の解除は開催予定日の約3ヶ月前。

他の会場を探す時間があった。
近隣に住宅、学校、病院が密集する高輪のホテルで行わなくてはならない必然性はない。
(4)集会の自由
(憲法21条)
「集会の自由」は基本的には国家、公的機関との関係において保障されたもの。
民間に会場提供を強制するものではない。
(5)裁判所決定の無視 民間同士の契約の解除の有効性に関する争いである。
保全段階のもので、極めて短時間の中で、上記のような事情について充分な審理、理解を得られないままなされたもの
本案の判決が確定した場合には従う。

(1)予約を受けた理由

ホテル側は
「日教組側の説明が事実と異なるものだったため、予約を受け付けてしまった」
というわけですが、このような言い方がビジネスの現場で通用するのでしょうか。

契約を締結する前に、そうでなくとも、会場費の半分を受け取る前に、予約を受けた場合の問題点について、自らも調査する必要があると思います。
そしていったん契約を締結した以上、その契約に拘束されるのは当然です。
あとになって「相手の説明がウソだったんだから、こっちは全然悪くない」といって全てをひっくり返してもよい、というのではまるで子供のケンカ。
ビジネスの手法とはいえないのでしょう。

しかも、後に記者会見を開く段階になると「過去開催実態」という資料が出てきて、その注には、
「上記内容は、新聞報道および当社による現地調査結果によるものです。」
とあります。
過去の新聞報道を見るだけで調べられることを、調べもしないで契約しておいて、解除を相手のせいにするというのはビジネスの態度とはいえません。

(2)契約解除の理由

「周辺の住宅・学校・病院の迷惑」を理由にしますが、それらの建物は契約以前から存在したはずで、突然できたものではないでしょう。
また、「周辺で8校の入学試験があって、受験生が7,000人もいて…」と言いますが、これにしても毎年ほぼ同時期に同じことが行われているわけで、今年に限ったことではありません。
いったん受けた契約を一方的に解除する理由になるとは思えません。

(3)解除による損害

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この発言に至っては、
「それを言っちゃーおしめーよ」
に近い発言ではないでしょうか。

お客様の予約で成り立っている、いわば予約産業であるホテルが、
「3ヶ月前に解除すれば他の会場探せるじゃないか」
「うちのホテルを使う必然性はないだろう。他を当たってくれ。」

と言っちゃうわけです。

日教組によれば、全体集会には3,000人が集まるとのこと。
そんなデカイ会場、そうそうありませんよ。
どっちの味方をするつもりも全然ないのですが、この点については、日教組の
「開催2ヶ月前に代替会場を確保することはほとんど不可能である。」
の方が正しいような気がします。

(4)集会の自由(憲法21条)

「憲法は公的機関と私人の間のルールであり、私人同士には適用されない。」
これは憲法の原則ですが、果たして今回のケースでもこの原則通りそのまま考えていいのでしょうか。

旅館業法の「宿泊拒否の禁止」という規定をみても、ホテルには公共的な性格があることが分かります。
また、憲法が「民間に会場提供を強制するものではない。」のはその通りだと思いますが、これと「解除できるかどうか」の話はまた別だと思います。

(5)裁判所決定の無視

「民間同士の契約の解除の有効性に関する争いである。」から裁判所の決定に従わないことが許される、というような言い方をしているのですが、これはどういう主張でしょうか。
この考え方が認められるのだったら、「民事訴訟は必要ない」「裁判所は民事不介入」ということになってしまいます。
何が何だか分かりません。

また、「保全段階のもので、極めて短時間の中で、上記のような事情について充分な審理、理解を得られないままなされたもの」であるから決定には従わないが、「本案の判決が確定した場合には従う。」という主張が許されるのでしょうか。
「決定も判決もどちらも従うべきルールである」というのが法治国家の基本原則であって、「本案判決以外には従わない」という勝手な理屈は許されるものではありません。

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