グリーン購入法に関するコンプライアンス-製紙各社のケース
■ニュースの概要
日本製紙の年賀再生紙はがきに関する古紙配合率偽装にはじまった「再生紙偽装問題」は、その後、 次々と製紙業界各社に拡大。さらに、年賀はがきにとどまらず、印刷用紙や情報用紙(コピー用紙など)にも偽装があったことが発覚。
現在までに偽装行為があったことを認めている製糸業者は、日本製紙連合会加盟業者のうち16社に加え、加盟していない1社を含め、17社にも上っている。
印刷用紙・情報用紙は、国の機関等に環境物品等(環境への負荷の低減に資する原材料)の調達を義務付けたグリーン購入法の対象であり、これに関する古紙配合率の偽装は、国を挙げての環境対策に真っ向から反するものである。
●関連サイト
| 位 | 会社名 (LINK) |
シェア (%) |
| 1 | 日本製紙 | 29.1 |
| 2 | 王子製紙 | 23.3 |
| 3 | 北越製紙 | 8.4 |
| 4 | 大王製紙 | 8.0 |
| 5 | 三菱製紙 | 7.6 |
[出所] 日経ナビ2008:シェア調査
■グリーン購入法の仕組み
1.目的
グリーン購入法は、その正式名称を「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」といいます。2001年に制定されたこの法律は、
- 国等が環境物品等の調達の推進
- 環境物品等に関する情報の提供
- その他の環境物品等への需要の転換
を促進するために必要な事項を定めることにより、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築を図り、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的としています(同法1条)。
2.具体的な流れ

(1)国の基本方針
この目的を達成するため、まず、国は「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」を決めなければなりません(同法6条)。
この基本方針の中に、例えば、以下のような基準が定められているのです。
| コピー用紙 | 古紙パルプ配合率100%かつ白色度70%程度以下であること。 |
| 印刷用紙 | 古紙パルプ配合率70%以上であること。 |
【参照】
環境物品等の調達の推進に関する基本方針(平成19年2月2日一部変更閣議決定)
(2)各省各庁等の義務
衆議院参議院の議長、最高裁判所長官、内閣総理大臣、各省大臣や独立行政法人の長は、基本方針に基づいて調達の推進を図るための方針を作成し、これを公表しなければなりません。そして、この調達方針に基づいて具体的な調達が行われることになります(同法7条)。
また、年度ごとに調達実績を取りまとめ、公表しなければなりません(同法8条)。
例えば、環境省の平成19年度調達方針には、以下のように定められています。
| 情報用紙 印刷用紙 |
調達を実施する品目については、調達目標は100%とする。 |
【参照】
(3)国の機関以外の義務
グリーン購入法は国の機関等以外に、地方公共団体や事業者(メーカーなど)、さらには国民の義務に関しても定めています。
簡単に表でまとめておきましょう。
| 主体 | レベル | 内容 | |
| 1 | 国 独立行政法人 |
義務 | 【国】 基本方針の策定 【各機関】 |
| 2 | 地方公共団体 地方独立行政法人 |
努力 義務 |
(1)調達方針の作成 (2)調達推進 |
| 3 | 事業者 国民 |
一般的 責務 |
できる限り環境物品等を選択 |
3.問題はどこにあったか
- 国が基本方針を作成し、
- それに基づき各省庁などが調達方針を作成・公表
- 年度ごとの実績をまとめ・公表
というプロセスを実施していけば、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会が実現できるという基本的な方向性に間違いはありません。
しかし、最大の問題は、製品が基準に基づいているかどうか、が製造業者の自己申告に頼っているに過ぎないという点です。
判断基準に対応する物品(特定調達物品)は、グリーン購入特定調達物品情報提供システムに掲載されているのですが、このシステムへの登録は、あくまで製造事業者等の自らの判断による自己登録に過ぎません。
システムの運営は環境省から業務を請け負ったグリーン購入ネットワークが運営しているわけですが、「登録申込用紙」の注意事項を見ると、以下のようになっています。
登録にあたっての留意事項
(1)製品の登録を希望される事業者は、製品がグリーン購入法特定調達品目の判断の基準に適合することを自らの責任において判断・確認して下さい。
(2)略
(3)登録する製品およびその情報内容については、一切の責任を情報提供事業者に持っていただきます。
事務局や調達者から求めがあった場合、掲載情報について確認できる資料等を提出することとします
(4)略
(5)虚偽の情報を登録するなど不正な行為が見つかった場合には、登録製品を削除するほか、公表その他の必要な措置を取る場合があります。
4.罰則等はなし

製品メーカー等は物品の購入者等に対し、必要な情報を適切な方法によって提供するように努めなければなりません(同法12条)。しかし、「努める」という努力義務に過ぎないのであって、これに違反したからといって、罰則等の規定は存在しません。
また、国の基本方針に適合しない製品を「適合品だ」として申告したとしても、せいぜい「製品の削除」や「公表」の措置を受けるだけです。
つまり、確信犯的に偽装をしたとしても、法的な制裁を加えることのできないシステムになっているわけです。
今後は、判断基準の客観化(第三者機関等による審査)や、違反者への行政処分・刑罰などの措置が検討されることでしょう。
5.ついでに勉強
グリーン購入法の特定調達物品以外にも、再生紙を使用した製品に関するマークが存在します。
※写真は会社の備品としてたまたま保管されていたトイレットペーパー(未開封・未使用)
(1)エコマーク
写真の左側のマークです。
生産から廃棄にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品(製品及びサービス)につけられる環境ラベルで、(財)日本環境協会 エコマーク事務局が運営しています。
(2)グリーンマーク
写真右側のマーク。
古紙の回収・利用の促進を図るため、古紙を原料に利用した製品であることを容易に識別できる目印として財団法人古紙再生促進センターが制定したマークです。
古紙を原則として40%以上原料に利用した製品に表示することができます。
(ただし、トイレットペーパーとちり紙は古紙を原則として100%原料に利用したもの、コピー用紙と新聞用紙は、古紙を原則として50%以上原料に利用したものに限る。)
■関連テキスト項目
テキスト第4巻『企業間・社会・環境に関するコンプライアンス』
No.10「廃棄物処理法、リサイクル関連法」

■関連する法令
第1条(目的)
この法律は、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人による環境物品等の調達の推進、環境物品等に関する情報の提供その他の環境物品等への需要の転換を促進するために必要な事項を定めることにより、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築を図り、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
第6条(環境物品等の調達の基本方針)
1 国は、国及び独立行政法人等における環境物品等の調達を総合的かつ計画的に推進するため、環境物品等の調達の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 国及び独立行政法人等による環境物品等の調達の推進に関する基本的方向
二 国及び独立行政法人等が重点的に調達を推進すべき環境物品等の種類(以下「特定調達品目」という。)及びその判断の基準並びに当該基準を満たす物品等(以下「特定調達物品等」という。)の調達の推進に関する基本的事項
三 その他環境物品等の調達の推進に関する重要事項
(3項以下略)
第7条(環境物品等の調達方針)
1 各省各庁の長及び独立行政法人等の長(当該独立行政法人等が特殊法人である場合にあっては、その代表者。以下同じ。)は、毎年度、基本方針に即して、物品等の調達に関し、当該年度の予算及び事務又は事業の予定等を勘案して、環境物品等の調達の推進を図るための方針を作成しなければならない。
2 前項の方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 特定調達物品等の当該年度における調達の目標
二 特定調達物品等以外の当該年度に調達を推進する環境物品等及びその調達の目標
三 その他環境物品等の調達の推進に関する事項
3 各省各庁の長及び独立行政法人等の長は、第一項の方針を作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 各省各庁の長及び独立行政法人等の長は、第一項の方針に基づき、当該年度における物品等の調達を行うものとする。
第8条(調達実績の概要の公表等)
1 各省各庁の長及び独立行政法人等の長は、毎会計年度又は毎事業年度の終了後、遅滞なく、環境物品等の調達の実績の概要を取りまとめ、公表するとともに、環境大臣に通知するものとする。
2 前項の規定による環境大臣への通知は、独立行政法人等の長にあっては、当該独立行政法人等の主務大臣を通じて行うものとする。
第12条(環境物品等に関する情報の提供)
物品の製造、輸入若しくは販売又は役務の提供の事業を行う者は、当該物品の購入者等に対し、当該物品等に係る環境への負荷の把握のため必要な情報を適切な方法により提供するよう努めるものとする。
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